「前立腺肥大症の手術には、どんな方法があるの?」
「TURPやHoLEP、WAVEは何が違うの?」
前立腺肥大症の手術にはさまざまな方法があり、それぞれ治療の仕組みや特徴が異なります。
従来から行われているTURP(経尿道的前立腺切除術)や、レーザーを使用するHoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)、前立腺組織を蒸散させる治療などに加えて、近年では前立腺組織を大きく切除せずに治療するWAVE(経尿道的水蒸気治療)やPUL(経尿道的前立腺吊り上げ術:UroLift)などの低侵襲(体に対する負担が少ない)治療も行われています。
大切なのは、どれか一つの治療がすべての方に適しているわけではないということです。前立腺の大きさや形、症状、年齢や持病だけでなく、入院期間や治療後の生活、性機能への影響など、患者さんが治療に何を求めるかによっても選択肢は変わります。
この記事では、前立腺肥大症の代表的な手術の中から、TURP・HoLEP・WAVEを中心に、それぞれの特徴やメリット・デメリット、手術を選ぶときのポイントについて泌尿器科医が解説します。
◎前立腺肥大症ではどんなときに手術を考える?
前立腺肥大症では、まず薬による治療が行われることが多く、薬で症状をうまくコントロールできていれば、そのまま治療を続けることも一つの選択肢です。
一方、薬を使用しても症状が十分に改善しない場合や、尿が出なくなる「尿閉」を繰り返す場合、前立腺肥大症に伴う尿路感染症や血尿、膀胱結石などがみられる場合には、手術を検討することがあります。
なお、頻尿や尿意切迫感などには、前立腺だけでなく膀胱の機能が関係していることもあります。手術によってすべての排尿症状が同じように改善するとは限らないため、症状の原因を確認したうえで治療を検討することが大切です。
手術を考えるタイミングについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 「前立腺肥大症の薬が効かないときは?手術を考えるタイミング」を詳しく見る
◎前立腺肥大症の手術にはさまざまな方法があります
現在の前立腺肥大症の手術では、お腹を切るのではなく、尿道から内視鏡などを挿入して治療する方法が中心です。
代表的なものには、電気メスを用いて肥大した前立腺組織を切除するTURP(経尿道的前立腺切除術)があります。また、レーザーを用いて肥大した前立腺組織を核出(くり抜くように取り除く)するHoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)や、レーザーの熱で前立腺組織を蒸散させるPVP(光選択的レーザー前立腺蒸散術)などもあります。
さらに近年では、前立腺組織を大きく切除せずに治療する低侵襲(体に対する負担が少ない)治療として、水蒸気の熱エネルギーを利用するWAVE(経尿道的水蒸気治療)や、専用のインプラントを用いて尿の通り道を広げるPUL(経尿道的前立腺吊り上げ術:UroLift)なども行われています。
このように前立腺肥大症には複数の手術方法がありますが、ここからはTURP・HoLEP・WAVEの3つを中心に違いをみていきます。
▶「 前立腺肥大症の低侵襲治療とは?WAVE・UroLiftの違い」を詳しく見る
◎TURP・HoLEP・WAVEは何が違う?
3つの手術で大きく異なるのは、尿道を圧迫している前立腺組織をどのような方法で治療するかです。
・TURP(経尿道的前立腺切除術)
TURPは、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて肥大した前立腺組織を少しずつ切除する手術です。
前立腺肥大症に対して長く行われてきた代表的な手術方法で、尿道を圧迫している前立腺組織を直接取り除くことで、尿の通り道を広げます。
・HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)
HoLEPは、尿道から内視鏡を挿入し、ホルミウムレーザーを用いて肥大した前立腺組織を核出する手術です。
前立腺の内側にある肥大した組織を外側から剥がすようにくり抜き、一度膀胱内へ移動させた後、細かくして体外へ取り出します。
・WAVE(経尿道的水蒸気治療)
WAVEは、尿道から専用の機器を挿入し、肥大した前立腺組織に水蒸気を注入する治療です。
約103℃の水蒸気を注入し、その熱エネルギーによって前立腺組織を壊死させます。治療された組織はその後1~3か月程度かけて吸収され、前立腺が縮小していきます。
つまり、TURPやHoLEPが肥大した前立腺組織を手術中に取り除く治療であるのに対して、WAVEは組織を切除せず、治療後に徐々に前立腺を縮小させる治療という違いがあります。
◎TURP・HoLEP・WAVEのメリット・デメリット
治療方法が異なるため、それぞれにメリットとデメリットがあります。
・TURPのメリット・デメリット
TURPは長年にわたって行われてきた代表的な手術で、肥大した前立腺組織を直接切除して尿の通り道を広げます。そのため、術後比較的早い段階から排尿状態の改善が期待できます。
一方、前立腺組織を切除するため出血を伴うことがあり、一般的には入院して治療を行います。また、術後に逆行性射精などの射精障害が生じることがあります。
・HoLEPのメリット・デメリット
HoLEPは肥大した前立腺組織をレーザーで核出するため、大きな前立腺にも対応しやすく、TURPと比較して出血を抑えやすいことが特徴です。
一方、一般的には入院して治療を行い、術後に一時的な尿失禁がみられることがあります。また、射精機能への影響も考慮する必要があります。
・WAVEのメリット・デメリット
WAVEは前立腺組織を切除せず、水蒸気の熱エネルギーを利用して治療します。前立腺組織を切除・核出する手術とは治療方法が大きく異なり、身体への負担を抑えた低侵襲治療の一つです。
組織を大きく切除しないため、出血や性機能への影響を抑えやすく、施設や患者さんの状態によっては日帰りで行うこともできます。
一方、TURPやHoLEPのように手術中に前立腺組織を取り除くわけではなく、治療された組織が吸収されるのに伴って排尿状態が徐々に改善します。そのため、治療効果が現れるまでにはある程度時間がかかります。
また、治療後は一時的な前立腺の腫れなどにより尿が出にくくなることがあるため、一定期間、尿道カテーテルによる管理が必要になります。
このように、それぞれの手術には異なる特徴があり、前立腺の状態だけでなく、入院期間や治療後の生活、性機能への影響など、患者さんそれぞれのニーズも考慮して治療方法を選択します。
◎TURP・HoLEP・WAVEの特徴を比較

※治療の適応や入院期間などは、前立腺の大きさや状態、患者さんの全身状態、医療機関によって異なります。
◎性機能への影響も手術を選ぶポイントの一つです
前立腺肥大症の手術を考える際には、排尿症状の改善だけでなく、射精などの性機能への影響も治療選択のポイントになります。
TURPやHoLEPでは、術後に逆行性射精などの射精障害が生じることがあります。そのため、特に比較的若い方や性機能を重視する方では、手術前にこうした影響について理解しておくことが大切です。
WAVEについては、5年間追跡した臨床研究で、治療後の勃起機能や射精機能に臨床的に意味のある悪化は認められなかったことが報告されています。
排尿状態を改善することだけでなく、治療後の生活で何を大切にしたいかまで考えて治療方法を選ぶことが重要です。
◎WAVEには5年間の治療成績も報告されています
手術を選ぶ際には、治療方法や身体への負担だけでなく、治療効果がどの程度持続するのかも気になるところです。
WAVEについて行われた海外の無作為化比較試験では、排尿症状や尿流の改善が5年間にわたって維持され、5年間の外科的再治療率は4.4%と報告されています。
WAVEは治療中に前立腺組織を取り除く手術ではないため、効果は徐々に現れます。一方で、治療後の経過については5年間の長期成績も報告されています。
◎どの手術を選べばいい?
前立腺肥大症の手術では、単純に「どの手術が一番良いか」ではなく、それぞれの特徴を理解し、自分の状態や希望に合った治療を選ぶことが大切です。
TURPやHoLEPは、肥大した前立腺組織を直接取り除く治療で、比較的早い排尿状態の改善が期待できます。HoLEPは大きな前立腺にも対応しやすいという特徴があります。
一方、WAVEなどの低侵襲治療が登場したことで、排尿症状の改善だけでなく、身体への負担、入院期間、仕事や日常生活への影響、性機能への影響なども含めて治療方法を検討できるようになっています。
こうした点は、高齢の方や持病のある方だけに関係するものではありません。仕事などのため長期間の入院を避けたい方や、性機能への影響をできるだけ抑えたい方など、比較的若い年代でも治療を選ぶ際の重要なポイントになることがあります。
前立腺の大きさや形、症状、尿閉の有無、持病などの医学的な条件と、患者さん自身が治療に何を求めるかを合わせて考え、それぞれに適した治療方法を選択することが大切です。
◎当院では日帰りWAVE治療を行っています
当院では、前立腺肥大症に対してWAVE(経尿道的水蒸気治療)による日帰り手術を行っています。
WAVE治療の特徴や治療の流れ、術後のカテーテル管理、費用などについては、以下のページで詳しくご紹介しています。
前立腺の状態などからTURPやHoLEPなど、WAVE以外の治療が適していると考えられる場合には、治療可能な医療機関への紹介も含めて治療方法を検討します。
◎前立腺肥大症の手術は、それぞれの特徴を理解して選ぶことが大切です
前立腺肥大症には、TURP、HoLEP、レーザーによる蒸散術、WAVE、UroLiftなど、さまざまな治療方法があります。
それぞれ治療の仕組みや特徴が異なり、前立腺の大きさや形、排尿症状、年齢や持病だけでなく、入院期間や治療後の生活、性機能への影響など、治療に何を求めるかによっても選択肢は変わります。
どの治療が一番優れているということではなく、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、自分の状態や希望に合った治療を選ぶことが大切です。
前立腺肥大症の薬を続けても症状が十分に改善しない場合や、手術について詳しく知りたい場合には、泌尿器科でご相談ください。
参考文献
- 日本泌尿器科学会 編.男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン2017(2023年修正・追加)
- 日本泌尿器科学会ほか.経尿道的水蒸気治療に関する適正使用指針(第2版).2026年.
- McVary KT, et al. Final 5-Year Outcomes of the Multicenter Randomized Sham-Controlled Trial of a Water Vapor Thermal Therapy for Treatment of Moderate to Severe Lower Urinary Tract Symptoms Secondary to Benign Prostatic Hyperplasia. J Urol. 2021;206:715-724.
- McVary KT, El-Arabi A, Roehrborn CG. Preservation of Sexual Function 5 Years After Water Vapor Thermal Therapy for Benign Prostatic Hyperplasia. Sex Med. 2021;9:100454.